22歳と18歳

「健二さん」

 耳元で名前を囁かれるのとほぼ同時に、背中に心地良い重みがかかった。

 肩の上から覆い被さるように、身体の前へと腕が回ってくる。すでに少年とは呼べないほどに成長した彼の身体は、それでも出会った五年前と同じく健康的に日焼けしていた。

「どうしたの、佳主馬くん」
「甘えてる」

 愛しさを込めてその腕を撫でてみれば、ぎゅっと抱きしめられる。その黒い髪が、声が、言葉が、耳をくすぐった。

 健二は知っている。「甘えてる」と口にしながらこうやってくっついてくる佳主馬こそが、こうすることで健二を甘やかしていることを。

 甘えるのは年下の特権などと、佳主馬は得意げに言っていた。でも、それはおそらく単なる建前だ。
 甘え方が決して上手ではない健二へ、こうやって手を差し伸べてくれているだけだろう。

「しょうがないなあ」

 それをわかっていて、それでもその手を待ってしまう自分自身を、健二はずるいと思う。
 だけど、その手はあまりに心地良かったから。

「じゃあ、甘やかしてあげるよ」

 いつだって嬉しさを隠しきれない笑顔で、掴んでしまうのだ。





佳主馬のほうが健二を甘やかすか、健二のほうが佳主馬を甘やかすかで、だいぶこのふたりのスタンスは変わってくる気がする。
これは、佳主馬のほうが甘やかすver。